はじめての被災地での治療

今回初めてはり灸レンジャーとして参加させていただきました森野と申します。
被災された皆様心からお見舞い申し上げます。

被災された方を治療するということは、日常行なっている治療とは違って会話の内容、治療の仕方など「これでいいのだろうか?」「どんな話をすればいいのだろうか?」と、手探りでの治療でした。

私が治療させていただいた方の所見

・望診
眼の輝きがなく、動きも鈍い
顔色は薄く黒く艶がない、表情はあまりない
年齢問わず、動作が遅くなり反応は鈍くなっている
舌診では、舌苔の多い方が多く、胖大で歯痕が目立つ

・聞診
声が小さく小声で話す(元気そうに見えても治療する際には小声)
口数が少なく、無口の方が多い

・問診
腰痛、頸肩部痛、頭痛、不眠などだが多くは語らず

・切診
脈診では、沈脈、濇脈、遅脈、濡脈、微脈の目立つ方が多い
腹診では、心下痞硬、胸脇苦満、小腹不仁の方が多い
心、肝、腎の診所に反応が多い
体表切診では、ほぼすべての方に足の厥冷が顕著であるが、問診では冷えは訴えない

・『証』は、
四診法から決めたが、肝病、腎病、脾病、肺病、心病それぞれありました。

・『治療』は、
「首が痛い」と訴える頸部に直接鍼灸治療をするか?
「首が痛い」となっている、身体の病の源を治療するか?
迷いましたが、治療院で行なっている患部の頸部はあまり触らず、
四診法から病の源を見つけ出し、病の根本から治療しました。

「こんなに楽になったのは、はじめて!」
「感動しました」と、
両日ともに、涙を流されて喜ばれているのを見て、私も涙腺が緩みました。

私達が活動をさせていただいた施設から歩いてすぐには、大規模な火災があった輪島市の市場がありました。
そこで見た市場は、まるで戦争の後のような光景で全身の力が抜け呆然としてしまいました。その倒壊した建物を目のあたりにして「少しでもちからになりたい」と、改めて活動への気持ちが強くなりました。

宿泊は、輪島市に近い七尾市の避難所の二階に宿泊させていただきました。
避難所のボランティア団体の方々は、みなさんとても明るくてユーモアのある方々が多くこころが和みました。その避難所での段ボールベットや屋外の仮設シャワーも利用させていただきしっかりと休養出来ました。
両日ともに施術を受けられた方のほとんどが熟睡できていないとの訴えがあり、日常での治療との違いを感じた。
森川さんをはじめとしたはり灸レンジャーの皆様の温かいお言葉、とても励みになりました。

20日は天候が急激に悪化するという石川県の友人からの連絡があり予定より早くの撤収でしたが、ノーマルタイヤの自家用車で金沢まで行った私は金沢西から帰路についたが、北陸自動車道を30分くらい走行したころから猛吹雪に襲われ、「冬用タイヤ規制中」の電光掲示板が連続したが降りず走行を続けた。
ところどころで雪が積もっており最悪2~3日高速道路上での滞在も覚悟して、まったく視界が視えず後ろからの後続車も来ない恐怖が数時間一宮まで続きました。

今もなお恐怖感が残っておりますが、次回からは公共交通機関を使用しての参加にしようと思います。
今後も能登半島の方々のおちからになれれば幸いです。

よろしくお願いします。

森野先生輪島202403

第一回能登訪問 感想

こんにちは。はり灸レンジャー隊員の清水です。

今回、能登へ訪問して思ったことは、やっぱり
「行ってみないと分からない」
この一言に尽きます。

震災直後の報道ではボランティアの訪問を制限するような呼びかけがあったことが印象的でしたが、
それがなぜなのか、実際に金沢から輪島に向かう道をレンタカーで走ってみて分かりました。

奥能登へ向かう主要道路である「のと里山海道」は、地震の影響で所々が思わぬ場所で隆起したり陥没したり、10〜20センチ程度の凸凹が無数に生じていて、天気の良く視界の開けた数時間の車移動でも、車酔いのような気持ち悪さを感じました。

(帰りは少し慣れましたが、震災直後の雪が降る中、修復もままならない状態で能登入りした人たちの中には、道の段差に気づかず横転したり、道なき場所に突っ込んでしまった車もあったそうです。あの震災直後に能登へ行けたのは雪道の運転に慣れていることはもちろん、悪路への運転へのある程度の覚悟と経験が必要だったのだなと思いました。)

そして、こうした道を毎日利用している地元の人たちの三半規管は大丈夫なのか…と心配になりました。

はり灸治療活動をさせていただいた輪島KABULETは輪島市の中心街にある入浴施設で、今は被災した方達の入浴場所として開放されています。

その一室をお借りできたこと、また施設のスタッフの方たちが事前にチラシを貼って地域の皆様にお声がけくださったおかげで、二日間でのべ56人の人たちへはり灸治療を受けていただくことができました。

お話を聞きながら治療させていただいて印象的だったのは、皆さんとても優しいこと。

ご自身も被災されてお家も危険度高と認定されているにも関わらず、全壊で(家に)帰れない人たちに申し訳ないと車内での寝泊まりや危険な家に戻って生活されていたり。
お身体を拝見し、日常生活であれば早く検査を受けて欲しいとアドバイスするような方でも「もっと大変な人もいるから…」と慮って、病院受診を躊躇っている。

この、「相手を思う気持ち」と「自分を大切にすること」のバランスが崩れてしまうのも、震災の二次被害と言えるのかもしれません。

そして、よその土地から来る私たちだからこそ何のしがらみもなくただただ言える「体を大事にして!」という言葉が、
ほんのちょっとでも、何かのきっかけとなるといいなと思います。

今回、はり灸治療を受けてくださった高齢の方の何人かが「あっさりした!」とニコニコ顔で言ってくださいました。
「あっさり」とはこの地方の言葉で「体が軽くなった、すっきりした」という意味だそうです。

あっさりという言葉を目や耳にするたびに、おばあちゃんたちの笑顔を思い出しています。

清水先生輪島202403

輪島での鍼灸ボランティアを終えて

こんにちは。
はり灸レンジャー、パープルの西井牧子です。

新年早々の能登半島地震の被害に遭われた方々に、心からお見舞い申し上げますと共に、1日も早い復興を心から願っております。

被害の大きさを報道で目にする度、被害に遭われた方々の計り知れない悲しみやご苦労などに思いを馳せると、居ても立ってもいられない気持ちで日々過ごしていました。

発災から2ヶ月半が経ち、ようやくライフラインも戻りつつある輪島に、今般はり灸レンジャーとして初めて鍼灸ボランティアに伺うことが出来ました。

金沢から輪島へ向かう道中は、能登半島を進むにつれ地割れや山々の滑落、そして倒壊した家屋の数々に言葉を失うばかりでした。

私達が活動をさせていただいたのは、輪島の中心部に近いKABULETと言う入浴施設でした。

被災された方々の、入浴という大切な役割を担う施設の一部屋をお借りし、2日間で56人もの方々を治療させていただく事が出来ました。

発災直後は無我夢中で頑張って来られた方々も、重い水や物資を運んだり、瓦礫の撤収など重労働が続き、お身体にも相当な負担がかかっていらっしゃいました。

また、避難所生活も長くなり、不眠やめまいなどの自律神経症状がひどくなってきた、とお聞きする機会も多かったです。

そんなまだまだ大変な状況の中、はり灸治療を通じてたくさんの方々にホッと一息ついていただけた事は私にとっても大変嬉しい事でした。

更に嬉しいことに、初日に治療を受けていただいた方から翌日に、
「こんなにも身体が楽になるなんて!
神戸の先生の所に通いたいぐらいですが、それは難しそうなので、私も鍼灸師を目指してみようかな、と思うぐらいに、身体の変化に驚きました!」
と言う、大変嬉しい感想をいただき、治療を通じて喜んでいただけた事が大変嬉しく、鍼灸師冥利に尽きました。

来月も、そしてこれからも、はり灸レンジャーの一員として、細く長く輪島の方々のサポートをさせていただけたら嬉しいです。

これからもどうぞよろしくお願いいたします。

西井先生202403輪島

(西井)

第1回能登訪問(二日目)概要

<施術日時>
3月20日(水・祝)11:00~15:30

<場所>
輪島KABULET(輪島市河井町)

<参加者>
4名 〔中村(岐阜), 森野(愛知), 西井(兵庫), 森川(兵庫)〕

<受療者>
30名(内7名が再療)

<対象>
近隣住民、避難所被災者(被災者支援)
施設の利用者、職員(支援者支援)

<活動内容>
・鍼灸マッサージ施術
・セルフケア用品の無償配布(希望者)

<日程>
7:00 七尾市避難所で避難者と共にラジオ体操
8:00 レンタカー出発
9:20 輪島市内の被災現場を回る
10:10 輪島KABULET到着、準備
11:00~ 鍼灸マッサージ施術
15:30 施術終了、撤収(悪天候予報の為、30分早める)
16:00 金沢駅へ向けて出発(大雨、雪、霙に会う)
18:30 金沢駅にて解散

<詳細>
昨日に引き続き、同拠点で鍼灸マッサージ施術を提供。
朝、拠点に向かう道中、ある被災者から施術希望の電話があった。
チラシに連絡先を書いてあった為であるが、それほど待ち望んでくれていたことが嬉しかった。

この日は朝早く宿泊先を出発したので、拠点のある輪島市内に早めに到着した。
大規模な火事のあった輪島朝市もすぐ近くであり、周辺の被災現場を回った。
道路も波打ち、倒壊したり消失した建物もあまり手つかずのようにも思えた。
復旧の先の復興には時間がかかるように感じられた。

この日一番の受療者は、昨日ご挨拶に行った鍼灸院の先生であった。
自ら被災されているにも関わらず、活動の様子を見に差し入れを届けてくださった。
お忙しい中、施術も受けて頂いたが、お身体からそのご苦労が感じ取られた。
地元鍼灸院の先生を支援することも、外部から来た鍼灸師の役目であると感じた。

そして、昨日の施術を受けて良かったからと、7名の方が二日連続で受療された。
また、昨日配布したセルフケア用品を使う人を見て、興味を持ち受療しに来てくれた方もいた。
これまでの被災地同様、同じ場所で継続して支援すると、施術後の経過を知ることも出来てお互いに良いことだと感じる。

施術の様子

受療者の主訴としては、痛み、倦怠感、睡眠に対する悩みが圧倒的に多い(91%)。
これまでの被災地でもそうだったが、空気が悪く、鼻や咽といった呼吸器系の不調も多い。
それに伴い、頭痛、首肩こり、背中の痛みなどの訴えも多かった(54%)。

この日は西日本を中心に悪天候となる予報であった。
石川県内もこの時期にも関わらず、雪や風が強まる予報で、帰りの交通手段が早めに途絶えるかもしれないニュースが入った。
多くのメンバーが翌日朝から仕事も控えていたため、活動を早めに切り上げ、帰路につかせて頂くことにした。
忘れ物、落とし物がないように、受け入れて頂いた現地の団体にご迷惑をかけないように、後片付けもしっかりして撤収した。

後片付け

帰り道は予報通り、雨と雪と霙と風が吹き付け、北陸の自然の厳しさをまざまざと見せつけられた。

輪島市内

能登半島地震は、半島の先に行けば行くほど被害も大きくなり、アクセスも悪くなる。
発災からもうすぐ3か月が経つが、倒壊した建物はそのままのところも多く、復興には長い時間がかかるだろう。

被災地に実際に足を運び、その光景を目にし、被災者の声を聞くことで、その現状とこれからを痛感する。

はり灸レンジャーとしては、関連団体と連携し、細く長く、継続した支援を行う意向である。

(森川真二)

第1回能登訪問(一日目)概要

<施術日時>
3月19日(火)13:00~18:30

<場所>
輪島KABULET(輪島市河井町)

<参加者>
4名 〔中村(岐阜), 森野(愛知), 西井(兵庫), 森川(兵庫)〕

<受療者>
26名

<対象>
近隣住民、避難所被災者(被災者支援)
施設の利用者、職員(支援者支援)

<活動内容>
・鍼灸マッサージ施術
・セルフケア用品の無償配布(希望者)

<日程>
3月19日(火)
9:45 金沢駅前レンタカー出発
12:00 輪島市役所 健康福祉部 福祉課長にご挨拶
12:30 輪島KABULET到着
13:00~ 鍼灸マッサージ施術
18:10 同じ町内にある鍼灸院へご挨拶(森川のみ)
19:15 施術終了後、宿へ出発(翌日も同場所で活動の為、撤収は無し)
20:30 七尾市にある避難所の一角で宿泊(連携団体の災害拠点場所)

<詳細>
はり灸レンジャーとしては、約4年半振りの被災地での活動、初めての能登訪問である。
被災障害者支援団体「ゆめ風基金」の紹介により、輪島市と民間団体が連携運営する地域の拠点にて鍼灸支援活動を実施。
近隣住民をはじめ、高齢者デイサービス、福祉避難所の方々の入浴支援の場としても活用されている。

輪島KABULET

久しぶりの活動で準備や慣れるまでに時間を要したが、施術時間になると続々と施術を受けに来られた。
支援先の現地団体が、地域の拠点として愛され、また事前に活動の案内チラシを近隣の避難所や拠点の各所に掲示してくれていたからである。

鍼灸マッサージ体験

施術場所の設営では、他の鍼灸災害支援団体の活動で知ったマスカーテープを使うことで、施術空間を上手く区切り、目隠しをすることもできた。
これまでの私たちの活動ではプライバシーが十分に確保されていなかったことは反省点である。

問診票、カルテも、他団体のものを参考に新しく改訂されたものを用いた。
コロナ禍を経たこともあって、体温測定や、血圧測定なども実施。
他団体と連携、活動を繰り返すことで改善されていった内容である。

マスカーテープで目隠し

施術に用いた鍼や鍼皿、消毒綿花は、セイリン社より提供して頂いた。
これまでの災害支援においても、必要なものを届けてくださっている。
ある程度継続した活動が見込まれれば、助成金を獲得し、活動資金から購入することも出来るが、初動でこういった支援物資を提供して頂けることは、非常に有難いことである。

セイリン社より提供

現在の被災地での道路状況だが、ちょうど訪問する直前(3月15日)に「のと里山海道」の下り線が全線開通し、金沢から輪島までのアクセスが良くなった。
それでも途中、応急復旧で道路に段差や片側車線があり、輪島から金沢の上り線はまだ一部区間で通行止めもある。

のと里山海道復旧中

奥能登まで行って、ホテルが営業している金沢や富山を行き来するには移動時間がかかってしまう。
それも支援が十分に行き届いていない要因の一つであると思われた。

今回の宿泊は、連携団体の紹介により、輪島市から近い七尾市の避難所にある支援拠点を利用させて貰った。
被災者の方も利用する「段ボールベッド」や「仮設シャワー」も使わせて頂き、貴重な体験もさせて頂けた。

金沢まで戻らずに宿泊できることは活動時間を確保することにもつながり、同じく能登支援をされていれるボランティアや団体との交流は心強く、刺激にもなった。

段ボールベッド

災害支援において、他の団体と連携することの重要性と有難さを改めて実感しました。

(森川真二)