自然な風景になる

はり灸レンジャー・レッドの舟橋寛延です。
2018年9月の東北鍼灸ボランティアは、いつもにもまして色んなことを深く考えさせられるものでした。
2011年3/11の東日本大震災をきっかけに私たち「はり灸レンジャー」は結成され、これまでかなりの回数、東北訪問治療を重ねて来ました。2011年~2015年ぐらいまでは宮城県が多く、仙台市、南三陸町、気仙沼市、石巻市、山元町など訪れた自治体も多彩です。
宮城県ではようやく災害復興住宅も完成し、仮設住宅もほぼ姿を消してきていると思います。被害にあった福祉施設も建て替えが終わったようです。
そんな中、この2~3年、私たちは福島県の障害者団体とご縁ができ、年に1回という細々とした関係ですが、途切れずに関わっています。

ところで今年2018年は本当に災害の多い年でした。大阪の地震、西日本豪雨、台風被害、そして北海道の地震と息つくひまもありません。
では、私たち「はり灸レンジャー」は、どのように行動すべきか?主だったメンバーと折に触れ相談してきました。私たちはとても小さなグループですので、心苦しいのですが、どこへでも飛んでいき支援できるわけではありません。限られた人的パワーをどこへ向けるか?ここが悩みどころです。
そして、今回、福島県への訪問を経て、自分たちの立ち位置が明確になったように思います。やはりグループ結成当初の気持ち通り、東北の応援を中心に取り組んでいこう!というのが結論です。3.11で被害の大きかった東北三県の中でも、とりわけ今後は福島訪問を軸に考えたいと思っています。岩手や宮城はもう大丈夫だ、ということではありません。それぞれの地域が固有の困難さを抱えています。しかし、福島県は何と言っても原発事故の影響が消えぬまま、重苦しい雰囲気がたれこめていると言わざるをえないのです。
災害ボランティア、とりわけ医療系ボランティアの中でも、正直に言って、鍼灸治療は即応性が必要とは言いにくい側面があります。第一次的には医師、看護師など、命にかかわる急性期の病気を見るプロが現地に入るべきでしょう。やがて避難所は閉鎖され、仮設住宅などに被災者は移ります。被災地の状況はこう着し、メディアにも取り上げられなくなってきます。被災された方々の生活は不自由なまま、落ち着かない日々が続くことでしょう。そんな時こそ、じっくりお話を聞きながら、体に直接触れる施術ができる私たち鍼灸師の出番だろうと思います。
そして、3.11からあっという間に7年半がすぎた福島県がどんな状況になっているか、マスメディアから伝わってくるものはあまりにも僅かと言わざるを得ません。更に私やメンバーの森川先生は、鍼灸業のかたわら障害者福祉に関わってきた経歴がありますので、被災した地域で奮闘する障害者やその仲間たちの傍らにいて、「皆さんのことを忘れていません」という声を実際の行動で伝えていきたいと思います。

今回、訪問したうち、田村市の「ゆうとぴあ」さんは4回目の訪問になります。私は全て参加しています。最初のうちは、お互いに遠慮があったものの、何度も顔を合わせるうちにお互い親しみを感じるようになります。
私たちが訪問するのは、敬老の日の連休明けの火曜日が多いので、「ゆうとぴあ」さんでの火曜日の流れが何となく分かって来ます。午前中に鍼灸施術を終えた後、ゆっくりとお昼を食べ、情報や意見交換もできます。また、お昼休みには訪問販売のパン屋さんも来ます。
「ああ、去年お邪魔したときも、パン屋さんが販売に来ていたな」
と眺めやりながら、逆に私たち自身が「ゆうとぴあ」さんの活動、行事の一環になっていることに気づきました。つまり私たちの存在が一つの風景になっているかのごとくです。こうして自然体で私たちを受け入れて下さる「ゆうとぴあ」さんの懐の深さに感謝すると共に、この関係性を続けていきたいと心の深いところで感じました。
これからも福島県、東北に足を運んでいきます。また会える日までお互いに元気で!

(2018年9/23 はり灸レンジャー レッド 舟橋寛延)

20180918ゆうとぴあ舟橋

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