第16回東北訪問

【概要】 2017年9月18日(月)~ 9月19日(火)

 
福島県田村市のNPO事務所でお灸教室 福島県の帰還困難区域の風景

 16回目の東北は、震災から6年半、前回の活動からは、ちょうど1年ぶりの訪問でした。
 これまで度々訪問してきた宮城県山元町では、内陸に移設された常磐線とその新駅周辺に、新しい町ができて、復興が進んでいく様子が感じ取れました。
 福島県田村市のNPO事務所では、お灸教室の後、個別に鍼灸施術も実施しました。以前の訪問で施術を受けられた方や、前回は体験程度で今回はしっかり受けられる方もおられました。セルフケアの方法をしっかり確認される場面もありました。継続して訪問することの意義を感じます。
 活動後、福島第一原発周辺の帰還困難区域のあたりを回りました。前日に見た宮城県山元町での光景とは対照的で、震災後6年半が経つにも関わらず、そのまま残されている様子が印象的でした。

(森川)

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活動メンバーによる報告

16回目の東北訪問予定

前回の熊本訪問から、すっかりご無沙汰してしまいました。
現在、来月9月の東北訪問へ向けて準備しております。

今回は、メンバーや現地団体との都合も合わず、少人数、短期間の訪問になってしまいました。
お互い無理なく、細く長くの支援を心がけて。。。

9/18(月・祝) 宮城県 亘理郡 山元町
9/19(火)  福島県 田村市

の訪問予定です。

活動内容などはまた後日、ご報告いたします。
よろしくお願い致します。

福島県に通う意味

福島県の田村市を訪問するのはこれで3回目です。今回は1か所のみの治療訪問であったため、比較的ゆったりと治療でき、また皆さんとお話を交わすこともできました。

hunahashi201709

私が治療したのは4名の方々です。そのうちお二人は「ケアステーションゆうとぴあ」の障害当事者で、お二人はヘルパーさんでした。障害があるお二人は、身体上のハンディキャップを持ちながら地域での生活を送っています。
今回、ヘルパーさんがたのお話を興味深く聞きました。
お一人は原発事故を受けて転々と避難しているうちにご家族の調子が悪くなり、家庭内で介護をすることに。それをきっかけにヘルパー研修を受けたとのことです。もとの職場は原発事故により閉鎖されています。
別の方も震災後にいまの仕事を始めたそうです。原発事故の直後、放射能を避けていった先が「ホットスポット」(放射能濃度が高い地域)だったなど。生々しいお話でした。
こういった話は、新聞・テレビなどメディア上でしばしば目にします。しかし、実際に治療をしながらお話を聞かせてもらうと粛然となります。目の前の人が実際に福島の地で生活をつづけている事実に打たれるのです。

治療後、時間に余裕があったので「はり灸レンジャー」の3人で沿岸部へ車を走らせました。郡山市や田村市は内陸部に位置し、いわゆる福島県の「中通り」です。そこから福島第一原発がある「浜通り」まで、ゆうに40キロはあり、山道のドライブです。
田村市から一路、東を目指すと突き当りが双葉町ですが、ここは現在も自由に入ることはできません。ましてや我々のように外部の者は通行許可証がありませんので。そこから南に進路を取り、大熊町を抜け、富岡町に入るとようやく規制が解除されます。そこで東に向かうと、常磐自動車道の高架をくぐり、国道6号線に合流できます。この国道6号は南北に走っていて、通行可能です。とはいえ、たとえば帰宅困難区域に指定されている双葉町に向かう枝道には進入できませんし、国道沿いのお店も閉鎖されています。放射能の濃度が高いのです。

ookumamati201709

「これが福島の現実だ」という思いを新たにします。同じ日本の中にこのような地域が依然としてあるのです。

2011年3月11日。あの地震の映像を見た多くの人々は戦慄し、言葉を失ったことでしょう。なにか被災地のために出来ることはないかと多くの方が思い、実際に行動したはずです。
私たち「はり灸レンジャー」も2011年5月の連休に初めて東北入りし、それ以来10数回にわたり鍼灸治療のボランティアを続けてきました。実際に現地に足を運ぶこと、光景を自分の目で見ること、被災者の言葉に耳を傾けること。そこでしか学べることが無いからです。
今年の9月11日で、震災発生から6年半が経ちましたが、マスコミの扱いは小さなものでした。それは時間の流れとして仕方がないことかも知れません。しかし、現地の方がたと縁を結んだ私たちは今後も東北を訪れることでしょう。
この段階になると外部からのボランティアができることは本当に限られています。被災者の力になる、なんていうのはおこがましいです。むしろ被災地の変わり様を学ぶという謙虚な立場を持つべきだと思われます。今回の福島県田村市の訪問を通じて、改めて現地訪問の大切さを感じ入りました。
私たちを受け入れて下さった「ケアステーションゆうとぴあ」の皆さんに心から感謝いたします。

(はり灸レッド 舟橋寛延)

復興の差 (その一)

震災から6年半、はり灸レンジャーとしては16回目の東北訪問でした。
今回の訪問では、いくつか復興の差を感じました。

2017年 9/18(月・祝)
【訪問場所】 宮城県山元町

今回は私たちと現地団体の都合が合わず、活動は見送り、セルフケア用品のお灸などとお手紙を届けることになりました。
その道中、周辺の復興の様子を見て回りました。

山元町は、震災直後から訪問を続けています。
はじめて訪れたとき、建物から道路や線路まで、何もかもが流されてしまい、道路は冠水、瓦礫や遺留物が積み上げられた状態でした。
そこから、更地になり、土壌の入れ替えあり、新しいビニルハウス(東北一のいちご生産高でした)の建設があり、新しい道路や線路がつながっていく経過を見てきました。
そして前回訪問時(震災から5年の東北)には、内陸に移設されたJR常磐線新駅が建設途中でした。

それが、今回の訪問では、新しい駅、新しい街が完成していて、人々の営みを感じることができました。
新坂元駅に訪れたとき、ちょうど電車が入ってきたときには、感慨に耽りました。

新坂元駅201709

山元町は、この新坂元駅、新山下駅、宮城病院周辺に、新しい街づくりが行なわれています。
公営住宅も、私の知っている神戸のマンション群と違って、平地に一戸建ての住宅街が広がっているのは特徴的でした。
マンションよりは、その人の生活が見えていいように思いました。

その一方で、ボランティアのたびに毎回訪れているのが、旧山下駅。

旧山下駅201709

この駅前には、商店街がありました。
津波で流され、その面影はもうありませんし、戻ってきていません。
(山元町は平野になっていて、町一帯が広く大きな被害を受けました。)

旧山下駅線路201709

線路も流され、ホームの一部だけが残ったままなのがわかります。
ここ数年、そこには変わらぬままの風景が残っていました。
新しい街ができる一方で、再建が難しく、人が戻って来ない地域もあるのです。

その旧山下駅前には、慰霊碑が建てられていました。
被災時の様子や犠牲者の御芳名が刻まれています。

慰霊碑山元町201709

「津波浸水高は最大で十三メートルを超え、
海岸から三・五キロメートルの内陸まで達し、
浸水面積は約二十四キロ平方メートル、
町域の四割近くにも及んだ。」

その被害の大きさを改めて知らされます。

その後、震災直後に現地の方に案内してもらったように、中浜小学校を訪れました。

中浜小学校201709

津波が2階天井まで浸水したものの、その上のシェルターのような屋上に避難することで、児童や先生全員が助かりました。

宮城県公式HP
震災を乗り越えて
山元町立中浜小学校のケース

「2011.3.11
東日本大震災
津波浸水深ここまで」
という青い看板が、その脅威を表わしています。

中浜小学校浸水深201709

こちらは、震災遺構として保存が進められているようです。

地元のニュースでも「JR常磐線開通」などの、復興の知らせが耳に入ってきます。
そして、新しい街だけを見れば、街の概観といったハード面は、やっと復興してきているようにも感じました。(それも震災から6年半です。)

ただ、実際に現地を訪れてみると、復興が進んでいない地域も見えてきます。
さらに、阪神・淡路大震災でもそうだったように、人々の暮らしといったソフト面となると、いくつもの課題があることでしょう。

私たちも、復興のニュースを聞いてや、街ができたから終わりではなく、実際の人々の様子はどうなのか?という視点を持って、これからも活動を続けていきたいと思います。

(続く)

(森川真二)

復興の差 (その二)

2017年 9/19(火)
【訪問場所】 福島県田村市、福島第一原発周辺

この日は朝から、福島県田村市にあるNPO団体事務所での活動でした。
こちらは震災直後に入ったボランティアでのご縁がつながり、今回が3回目の訪問になりました。

お灸教室田村市201709

まずは、集まられた皆さんに「お灸教室」と称して、お灸の使い方をレクチャーします。
その後、希望の方々に、個別の鍼灸施術と、お灸やローラー鍼を使ったセルフケア方法をお伝えしていきます。

施術風景201709

今回はじめて施術を受けられた方、
前回の施術後、また楽しみに待っておられた方、
前回はお試し程度で、今回はしっかり施術を受けられた方、
それぞれに鍼灸を体感してもらい、セルフケアの方法もお伝えしました。
実際にセルフケア用品を手に取って、熱心にポイントとやりかたを聞かれる様子が印象的でした。
一度行っただけではなく、継続して訪問することで、その良さを知ってもらえることもあるようです。

そして、他の被災地と違って、特別ここで聞こえてくるのが、放射能の話です。
放射能については、様々な意見や考えがあるかと思います。
私の知る限りでは、身体に及ばす影響はまだ分かっていないことも多いように思います。
内部被曝のこと、数世代先に影響を及ばすかもしれない将来のこと、前例とは状況も異なり比較できないこと。(病気、身体について、わかってないことも多いので当然でしょう)
見えないものですし、すぐにその影響が表れないものもあるので、見過ごされたり、忘れられてしまうものかもしれません。
かといって、そこに暮らす人々にとって、また日本中に原子力発電所がある以上、誰にとっても無関心ではいられないことです。
福島県内には、未だ帰還困難区域があり、ホットスポットがあるのも事実です。
これから先も関心を持ち続けなければいけないと思います。

内部被曝については、食品に対する不安があります。
「福島県産」と言われると、つい敬遠したくなるかもしれません。
しかし、福島県産で流通に乗るものほど放射線量は厳しくチェックされています。
意外に、その他の産地のものに放射線量が高いということもあるのです。
間違った誤解が、被災地の人を苦しめることにもなります。
他者の為を思うなら、「知る」ということも大切に思います。

私は楽観的な方で、わからない不安なことには、目を背けるところがあります。
放射能被害についても、あまり考えないようにしたり、程度の問題によると思っています。
ただその考え方の違いに、軋轢が生じることもあります。
事実、家族が離れて暮らすこともありますし、そのまま戻らないこともあるのです。
それは、単純に肉体的にどう影響があるかないかでは済まされない問題です。
施術中に聞いた、
「精神的な影響が大きいですよ」
という被災者自身の言葉が、それを物語っていました。

活動終了後に、帰還困難区域の周辺を車で回りました。
福島第一原発のある大熊町と双葉町、そして富岡町、双葉町、南相馬町を、南北に走る国道6号線があります。
車両での通行は可能なのですが、そこから東西に入る道には許可書が必要だったり、建物にもバリケードがあり自由に入ることが許されていません。

帰還困難地域201709

今まで私たちがボランティアで訪れていた地域とは、随分違う風景が広がっていました。
この状況を見ると、私たちが住む環境がいかに恵まれているか、身につまされます。

私たちのすることは本当に微々たるものです。
けど健康であることが、その人の暮らしを支えてくれます。
ほんのわずかでも健康の役に立ってもらえればと思います。
そしてそこから何か良い方向へとつながって貰えればと願います。

(森川真二)

福島訪問を終えて

こんにちは、レンジャーピンク森川彩子です。
震災から6年半、今回は個人的には3度目となる福島での活動でした。
お伺いした田村市は2回目の訪問です。

受け入れてくださった事業所、「ケアステーションゆうとぴあ」の皆さんは鍼灸に興味を持たれていて、積極的に治療を受けられたり、セルフケアの質問も多く、鍼灸師としてとても嬉しく思いました。
痛いイメージや、怪しいイメージがある鍼灸ですので、ボランティアの機会には ”どう受けて頂こう” と思案します。鍼灸に対するイメージが少しでも良くなっていたのなら喜ばしいことです。
でも、ゆうとぴあさんの ”よそ者を受け入れてくださる懐” に入らせて頂いた所が、大きかったように思います。
”お体のケアをして少しでも過ごしやすくなって頂く” とにかくそれだけを思って施術にあたりました。
治療後にわざわざ戻って来られてセルフケア用品を求められたり、知人に薦めるお話をされたりするひとコマもあり、お陰さまで良い活動ができました。

事業所での活動後、帰りの飛行機が仙台発でしたので、田村市から富岡町へ出て、福島第一原発のある大熊町を通る国道6号線を車で北上しました。
6年半経っても放射線量が高いために人が戻れず、そのままにされた町は、東北の復興が進む他の地域と大きく違いました。この先、手を付けられそうもないという印象でした。

原発があるということはこういう現実を招くのだと改めて感じました。
原発近くの方は少しでも被ばくを防ぐという工夫を毎日されていると思うと、いたたまれません。
現地にお伺いできたことで、ほんの一部ですが現状に触れることができました。
近くで地震があれば、少しでも被ばくを避ける工夫のいる暮らしが私達の暮らしになるのだと想像します。
他人ごとでない現実を受け入れるために、やみくもな恐怖を防ぐために、知ることが必要なのだと感じました。
そして、これから望む世界はどういうものなのか、もっとイメージしたいと思います。

ゆうとぴあ施術201709