こんにちは。はり灸ライトグリーンの坂口です。
今回の第11回訪問の二日目に、宮城県石巻市にある「からころステーション」を見学させていただきました。
石巻を拠点に被災者のこころのケアに取り組む「からころステーション」についてレポートします。
からころステーションとは
からころステーションでは、主に東日本大震災で被災された方のこころのケアを行っており、医師・臨床心理士やコワーカー(ケースワーカーやカウンセラー)が在籍しています。
「アウトリーチ(訪問支援活動)」「電話・来所相談」「ハローワーク相談会」をメインの活動にしており、さらにその他にも被災者を対象にした講演会やコンサートなど、外部での活動も展開しています。
カンファレンスを見学
我々はり灸レンジャーがからころステーションに到着したのは辺りが暗くなり始める頃でした。
「ステーション」という名の通り、JR石巻駅のすぐ向かいにその建物があります。
中に入るとカンファレンスの最中で、医師やケースワーカーの方が一日の活動を報告していました。
それを傍聴させていただき、被災地のメンタルヘルスを取り巻く問題の困難さに触れることが出来ました。
こころの専門家、震災直後の活動
その後はケースワーカーの高柳さんにお話を伺いました。
高柳さんは震災前、精神障害をつ方々の就労支援として仙台市内で駄菓子屋さんを営んでおり、なんと東日本大震災の前日に防災対策と避難訓練を行っていたそうです(!)。
それにより、懐中電灯の場所や避難場所の確認など、多くの方が助かったとの事でした。
震災直後からこころの専門家たちは被災した人々に接触していたそうですが、その時は「心のケアなんかいらない。こっちは生きるか死ぬかなんだ」と断られた事もあったそうです。
そこで支援物資のリストを持って訪問し、欲しいものを提供する。それに加えて何か困っている事があれば協力しますよ、というやり方にした所、「実は…」と悩みを打ち明けてくれる事が増えたそうです。
(ちなみに、このような物資を介した心のケアを「石巻モデル」と呼ぶそうです)
現在、被災地が抱える問題
そして話は被災地が現在抱える問題に移りました。
話題に上がったのが「見なし仮設(民間借り上げ住宅)※」についてです。
【※見なし仮設(民間借り上げ住宅)…東日本大震災により住居を失った人の為に国や自治体が民間の賃貸住宅を借り上げ、被災者に応急的に提供する制度。被災者が自力で賃貸住宅を見つけ入居した場合でも、賃料は国庫負担によってまかなわれる。なお、一般的に仮設住宅と言うとプレハブ住宅を指す。】
プレハブ住宅で暮らしている人からすると「見なし仮設はプレハブより住みやすくて良いよね」という気持ちがあるそうです。
一方で見なし仮設の外観は普通の住宅と同じであり、一つのマンションに被災した人とそうでない人が混在している場合もあります。
一見しただけでは被災により家を失ったのかどうかわかりません。
その為、プレハブ住宅に住んでいる人と比べて支援が行き届かない事があるそうです。
また目に見える被害の有無や大きさだけで、震災がその人に与えた影響を判断する事は出来ません。
震災による直接の被害を本人が受けていなくても、親族が被害を受けていらっしゃるケースもあり、震災による被害は想像するよりも広範に渡っていると考えられます。
このような問題に対処するために、からころステーションは「アウトリーチ(訪問支援活動)」というスタイルをとっています。
アウトリーチ(訪問支援活動)とは、震災の影響を受け孤立していたり、人とのつながりを断たれた人の元に積極的に訪問して、支援を行うスタイルの事です。
我々はり灸レンジャーも仮設住宅の集会所などを訪問して治療を行う事がありますが、そこで言われるのが「集会所に出てきている人は、困っている人の一部でしかない」という事です。
周囲にSOSを出せる人は半分助かっているとも考えられ、SOSも出せずに孤立している人は少なくないそうです。
スライドを交えてお話を伺い、被災地が抱える問題への認識を深める事が出来ました。
ちなみに、お話を伺ったケースワーカーの高柳さんは腰まで伸びた長い髪をひとつにくくっていらっしゃいました(男性です)。
その事について触れると、「願掛けで伸ばしているんですよ。でも、中々平和にならないですね」とおっしゃっていたのが印象的でした。
からころステーションの理念
からころステーションのスタッフが支援を行う際に気をつけている事があり、それが「地元中心、迷惑をかけない、自分たちのルールを通さない、怒らない、文句を言わない」だそうです。
また、この活動を少なくともあと15年は続けるとの事でした。
(ちなみに、震災の年もあと15年、翌年もあと15年、そして現在もあと15年…と年々伸びているそうですが。)
阪神淡路大震災から20年経った今なお、全ての問題が解決したわけではありません。
東日本大震災でも息の長い支援が必要になりそうです。
からころステーションのアウトリーチという積極性、それでいて地元中心で迷惑をかけないという謙虚さ。これらの一見相反する理念は、「15年は活動を続ける」という覚悟に裏うちされていると感じました。
からころステーションについて更に詳しく知りたい方は以下のリンクをご覧ください。
からころステーションのHPはこちら
最後になりましたが、快く見学を承諾して下さったスタッフの皆さま、そして丁寧にお話をして下さったケースワーカーの高柳さん、お忙しい中本当にありがとうございました。
また、からころステーション訪問の仲介の労をとっていただいた「鍼灸地域支援ネット」の日比先生にもこの場を借りてお礼を申し上げます。
(坂口)